この記事では、音大生・音楽家が音楽活動をする上で、”青色申告をするとどんなお得なことがあるのか”について、わかりやすく説明していきます。
目次
1 青色申告の得するポイント3つをおさえよう
まずは、オンカクが最重要視している、”得するお話”から始めましょう。
音大生・音楽家にとってコスパがいい(努力の割に見返りが大きい)と思われる順番でいきますね。
1-1 青色申告控除(10万円または65万円)ができる
結論から言います。
この青色申告控除というのがあるので、音大生・音楽家のあなたにはぜひ、
”青色申告(特に10万円控除の方)で得して欲しい”
です。
青色申告控除とは?
では、青色申告控除ってのはなんでしょう?
確定申告の流れの最初の方に、”収入から経費を引いてもうけを計算する”というのがあります。
青色申告控除とは、”このもうけから、さらに10万円または65万円を引いていいですよ”ということなのです。うれしいですね。
確定申告の流れでは、あとの方で、このもうけからいろいろなものを引いた金額に、税率をかけて税金の金額を計算します。
税率は人によって違いますが、最低税率だとしても、国に払う所得税が5%、都道府県・市区町村に払う住民税が10%なので、合計15%です。青色申告控除が10万円とすると、10万円かける15%で、税金の額が15,000円お得になるということです。
10万円控除と65万円控除はどう違う?
では、この青色申告控除の10万円と65万円、どこが違うんでしょうか?
それは、”どのような帳簿をつけているか”によって分かれます。
大まかに話すと、
- 複式簿記(割と難しい帳簿をつけている)でやっている人は、65万円控除
- 簡易簿記(割と簡単な帳簿をつけている)でやっている人は、10万円控除
ということになります。わかりやすいですね。
この記事では、複式簿記と簡易簿記については詳しく書きません。
ここでは、
”オンカクは簡易帳簿で10万円を強くオススメします”
ということだけ知っておいてください。
なぜ10万円控除をオススメするのか
ではなぜオンカクは、簡易簿記の10万円控除をオススメするのでしょうか?
その理由は、青色申告の簡易帳簿を選択するデメリットが、実質何もなくなったからです。
そもそも確定申告には、青色申告と白色申告の2種類しかありません。
何も届出をしなければ、その人は自動的に白色申告になります。
そして、青色申告の届け出をした人だけが、青色申告になるのです。
平成25年分までは、白色申告の方には、”帳簿の作成”などが義務付けられていませんでした。
ところが、平成26年分から、
「白色申告の人も、帳簿をつけてくださいね」
ということになってしまったのです。
平成25年までは、この”帳簿をつけなくてもいいこと”が、白色申告の最大のメリット(?)と言われていたのですが、それが無くなってしまったということです。
つまり、白色申告だろうが青色申告だろうが、帳簿をつけなくてはならなくなったのです。
ということは、逆に言えば、青色申告のデメリット(帳簿をつけなくてはいけない事)が、青色申告だけのデメリットではなくなったということです。
なのでオンカクでは、どうせ帳簿をつけなくていけないのなら、
「控除ができる青色申告(10万円の方)にしましょうよ」
とオススメしているというわけです。
1-2 30万円までの資産(楽器など)が、その年に経費で落とせる
税金の世界では、”10万円を超える資産(楽器など)は、買った年に全額経費では落とせない”というルールがあります。これを「減価償却」というのですが、青色申告なら、それが30万円を超えなければ、買った年に全額経費で落とせるのです。
そもそも減価償却とは
税金の世界には、”10万円を超えて買ったもの(資産といいます)は、何年かに分けて経費にしましょう”というルールがあります。
何年で分けるのかは、国税庁が出している一覧表があって、新品の楽器だと5年と決まっています。
(ちゃんと見積もる方法もありますが、実務上は、一覧表の簡易的な方法をとることがほとんどです。)
中古の計算の仕方も決まっていますが、この記事では省略しますね。
ですから、もし20万円のシンセサイザーを買ったとすると、
20万円÷5年=4万円
ということになって、買った年から5年間、毎年、”減価償却費”として、4万円を計上します。
年の途中で買った場合は、月割りします。もし10月に買って使い始めたとしたら、3カ月なので、3/12をかけて、1万円となります。
ちなみに、税金の世界では、”買った日”ではなくて”使い始めた日”が重要ですので、気をつけてくださいね。
青色申告なら、30万円以下まではその年に経費にできる
ところが、青色申告を選択している人は、30万円までの資産(楽器など)なら、全額をその年の経費として落とせるのです。
よく考えたら、減価償却でも、5年かけて全額経費にできるので、長期的には損得はないんですよね。
でも、やっぱり少しでも早く税金が安くなった方がいいので、多くの方にとても評判がいいです。
1-3 もし赤字になっても翌年以降に繰り越せる
”赤字になる”、つまり、”収入よりも経費が上回ってしまう”という事態は、音大生・音楽家にはあまりないようです。とはいえ、可能性はありますし、もし赤字になった場合にはとってもお得なものなので、覚えておいてくださいね。
赤字になるとこうなる
もしも”赤字”になった場合、こうなります。
仮に、2018年に、
収入100万円に対して、経費が150万円だったので、50万円の赤字だったとします。
赤字(マイナス)の場合、税金はゼロになります。マイナスにはなりません。
翌年に黒字になったら
では次に、2019年に黒字になったらどうなるのでしょうか?
仮に、翌年2019年にがんばって収入が増えたとして、
収入300万円に対して、経費が100万円だったとすると、200万円の黒字(もうけ)です。
(本当はこの後、いろいろと引いたりしてから税金の計算をするのですが、説明を簡単にするためにそこの過程は省略します)
もし税率が5%だったとすると、200万円×5%=10万円の税金になります。
ちょっと待った!
でもよく考えてみると、
2018年はマイナス50万円で、税金はゼロ
2019年はプラス200万円で、税金は10万円
・・・
ん?ちょっと待ってくださいね。
2年間もうけのトータルは、マイナス50万円と、プラス200万円で、プラス150万円です。
でも税金のトータルは、ゼロと10万円で、10万円・・・
なんだか納得がいきません。
トータルプラス150万円なら、税金も150万円×5%=トータル75,000円でもいいのではないかと思いませんか?
「繰越控除」というのがあります
そこで、もしも赤字になってしまったら、”翌年以降3年間までは、黒字と相殺できる”という制度があるのです。これを「繰越控除」といいます。
ですので、先ほどの例だと、
2018年はマイナス50万円で、税金はゼロ(ここまでは同じ)
2019年はプラス200万円だけど、繰越控除で50万円を控除するから200万円-50万円=150万円
150万円×5%で、税金は75,000円となります。
おお、これなら納得!
というわけで、そもそも赤字にならないことを祈りますが、もしなってしまった時は、せめてこの青色申告の繰越控除を使って、3年以内に取り戻してくださいね。
2 青色申告ができるための条件
なにやら青色申告はお得そうなことがわかりましたか?では次に、青色申告ができるための条件を見ていきましょう。
2-1 申請書を1枚出すだけ
なんと、青色申告のための条件は、「青色申告承認申請書」という紙を1枚提出するだけなのです。
基本的には、これだけで、特に質問や問い合わせなどもなく、受け付けられます。
2-2 期限があります
ただし、期限があります。
青色申告で計算しようと思っている年の3月15日までに提出してくださいね。
仮に2018年分の計算(申告は2019年3月15日まで)からやりたいのであれば、2018年3月15日までに提出ということになります。
例外として、年の途中で新たに音楽活動を始めた場合には、その日(開業日)から2か月以内に提出すれば大丈夫です。
8月にデビューだとしたら、3月15日の提出じゃあ、どうやったって間に合わないですもんね。
2-3 郵送でもOK、コピーも取っておこう
よく聞かれるのですが、郵送でもOK(消印有効)です。確定申告自体も郵送でOKなんですよ。
混んでる時期なので、オンカクは郵送をオススメしています。
それと、税金関係の書類は、あとで何かと便利なので、コピーを取っておくことをおススメします。
税金の書類として、バインダーなどに綴っておいてもいいですね。
もちろん、今時でしたら、スキャンや写メなどで保管しておいてもいいと思います。
特に申告書は、次の年に、前の年のを見ながらやるととっても楽チンですよ。
我々税理士は、コピーに(控)と書いて、返信用封筒もつけて、提出用と一緒に税務署に郵送しています。
そうすると、税務署は、受領印を押して返信してくれます。
万が一の時のためなどもあって、こうしているのですが、音大生・音楽家の場合は、ある程度以上の規模の事業でなければ、コピーを取って、手元に保管しておけば十分だと思います。
もちろん、法律的にはどちらでもOKです。
3 おさらい
それでは今回のポイントをおさらいしておきましょう。
- 青色申告の10万円控除はやった方がいいらしい
- 青色申告は30万円以下の資産(楽器など)なら、その年に経費にできる
- 青色申告は、赤字になっても次の年に相殺できる
- 青色申告は申請書を出すだけでできる
ということでした。
あなたが得しそうなポイント、損しないで済みそうなポイントは見つかりましたか?
見つかった方は、ぜひ実際に使ってみてくださいね。
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